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第109巻12号 協会だより

今年も、冬本番の師走。米国は11月としては異例の寒波に見舞われ、国土の半分以上で積雪、ハワイを含む50州で最低気温が氷点下を記録。これは、米国上空の偏西風が南へ蛇行したためとのことで、幸い日本ではそのようなことは起こっていないそうです。酒造りにはほどほどの寒さが必要ですが、気温の変動の激しい冬は困りものです。天候の関連で、今年度の米質について、全国的に8月下旬から9月は、低温が続き、溶解性に関して、7月下旬から8月上旬に出穂する五百万石などの早生品種は、平年並み~やや溶難い。8月下旬~9月上旬出穂する山田錦などの西日本の晩生品種は、全般的に溶けやすいことが予測されています。
 
◆第59回全国酒造技術指導機関合同会議が10月下旬に国税庁鑑定企画官室主催で開催されました。本年から企画官室に、酒類国際技術情報分析官が新設され、技官8名体制で酒類技術行政への取り組みが強化されています。以下、会議の概要です。
1.鑑定企画官挨拶
①酒類の安全性への取り組み(放射性物質に対する酒類の安全性確保、酒類の安全性への国際的議論への参画)②日本産酒類の輸出環境整備等(新設の酒類国際技術情報分析官の役割、分析鑑定技術支援官の役割)③酒総研との協力体制
2.(独法)酒類総合研究所理事長挨拶
①地域ブランド確立に対する支援 ②酒類の高度な分析・鑑定(輸出酒類の受託分析、ホルマリンを使用しない清酒のアミノ酸分析法)③酒類の品質評価(関係業界団体と共催による鑑評会の実施、輸出促進に資する品質確保のためのオプシュン分析)
3.(独法)酒総研の業務の現状
4.各業界団体からの意見等
①日本酒造組合中央会 ②日本蒸留酒酒造組合 ③ビール酒造組合 ④日本洋酒酒造組合 ⑤日本ワイナリー協会 ⑥全国地ビール醸造者協議会
5.各指導機関の研究実績
11課題についてポスター発表(本年度から)。
6.平成25年度産酒造用原料米の作柄状況 米質に関しては、前述。
 
◆文科省文化庁は、11月17日、「日本酒醸造の近代化に貢献した唯一の国立研究施設として(近代/産業・交通・土木)旧醸造試験所 第一工場1棟 東京都北区 独立行政法人 酒類総合研究所」を重要文化財に指定すると発表しました。その理由として「醸造試験所は、日本酒の研究を行って醸造技術と品質の向上を図るため、明治政府が設立した研究施設である。第一工場は中核施設の大規模な煉瓦造建造物で、明治37年に竣工した。設計は大蔵技師の妻木頼黄である。断熱のため厚い壁体に空気層を設けた中空壁とし、天井はヴォールト天井、二階床は鉄骨梁に煉瓦ヴォールトを架けるなど、高い建築技術が用いられ、ドイツのビール醸造施設を応用して設計した煉瓦造工場建築である。当時最新鋭の設備を備えた日本酒醸造施設として、また大規模な複合煉瓦造建築物としても技術的に高い価値がある。醸造に関する唯一の国立研究機関の施設として、日本酒造りの近代化と酒類産業の発展に貢献しており、歴史的価値が高い。」と紹介しています。写真は、醸造会館から見た赤煉瓦工場(平成26年11月撮影)

 
 
 
 
 
 
 
◆醸造協会からお知らせ:今年度、「日本醸造学会 功績賞」を受けられた井上 喬先生が授賞を記念して著書”ダイアセチル”を特別価格(千円)でご提供いただけるとのことですので、ご希望があれば当会までご連絡下さい。