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第110巻10号 協会だより

9月も半ばを過ぎ、東京では秋祭と彼岸花と平年であれば比較的天候に恵まれた季節。ところが、その中旬に秋雨前線と台風の影響で栃木県と茨城県が集中豪雨で河川の氾濫により大きな被害を受け、未だに復旧していない地域が多く残されています。 9月11日に開催の、酒米懇談会で農業環境技術研究所の飯泉仁之直氏による「世界のコムギとコメの精算変動を収穫3ヶ月前に予測する手法の開発」と題する講演の中で、その予測方法に、比較的精度よく入手できる、エルニーニョ/ラニーニョ現象が有効で、その予測精度を向上することでより信頼性の高い作物生産変動予測が可能になるとの講演がありました。気象庁の長期予報でも今年は、エルニーニョ現象のために発生する気象現象が見られるとの予測があったと記憶しており、このところの異常気象と関係を想像させる講演でした。とは言え、9月27日(日)は、中秋の名月。全国的にお月見日和になることを期待しています。ということで、そろそろ燗酒が恋しい今日この頃です。
 
◆「日本醸造協会誌」9月号に、喜多常夫氏「18世紀までに創業した清酒・焼酎蔵元296社の創業年順リストとその分析」が掲載されています。以前、ある経済誌に日本は世界有数の長寿創業企業が多く、創業千年に近い酒類業者がリストアップされており、驚いたことを思い出したが、本稿は、その酒造業者を筆頭に現在も酒造業を継続している292社が掲載されています。更に創業の「特異年」や「地域性」、海外の長寿企業との比較など興味深い分析がされていますが、特に、「日本最古の酒蔵」については謎も多く、今後、新しい資料の発見に繋がることが期待されます。
 
◆「第1回 清酒・ビール製造技術セミナー」が清酒の部9月8・9日、ビールの部が10日に「北とぴあ」で開催されました。今回は初めてビール製造技術とドッキングしたことで、第1回開催になりました。昨年までの焼酎技術セミナーは、本格焼酎製造者の方々の参加し易い、全国本格焼酎鑑評会一般公開に充実して計画したいと考えており、皆様のご要望をお待ちしております。さて、清酒の部には、39名のご参加をいただき、地域性を前面に出した品質や製造への取り組みとして、妙高酒造(株) 松田治久氏の「世界市場に向けた新ブランドMontmeru (モンメル)の立ち上げ」、(公財)雪だるま財団 伊藤親臣氏の「雪室を利用した食品とブランド化~雪中貯蔵酒の現状と可能性~」、栃木県産業技術センター 小坂忠之氏の「栃木県の酒造り~ものづくり・ひとづくり~」が講演されました。3日目、ビールの部は、18名の参加をいただき、主催者として、正直”ホッ”としましたが、今回、ご講演もいただきました、全国地ビール醸造者協議会 黄金井会長、(独)酒類総合研究所 日下一尊氏、同じく 水野昭博氏のご指導の賜と感謝しております。内容は、第1回ということで、黄金井会長の「地ビール業界の現状及び将来の展望」、日下氏の「地ビールにおける醸造者教育プログラムと技術課題」の後、「全国各地の地ビール醸造~我社のビール製造~」と題して、岡山県、北海道、宮崎県の地ビール紹介がありました。次回からは、地ビールメーカーに役立つ技術を取り上げていこうと考えています。
 
◆セミの声が聞こえなくなって何となく寂しい気分ですが、赤煉瓦酒造工場の持ち主であり、管理人の(独)酒類総合研究所東京事務所がこの7月から職員全員が東広島勤務となり、東京事務所で業務があれば、広島から出張とのこと、滝野川の一角が一層寂しく感じられます。重要文化財 赤煉瓦酒造工場の行方は?