アーティザンサケメーカー、センチュリーマーケティングコーポレーション 白木正孝

5月
24
2021

アーティザンサケメーカー、センチュリーマーケティングコーポレーション白木正孝

ご氏名をお願いします

白木 正孝(しろき まさたか)

ご所属

カナダ在住歴47年になります。

アーティザンサケメーカー、センチュリーマーケティングコーポレーション代表。
カナダバンクーバで日本酒の輸入を21年、清酒醸造を14年行っています。

また米生産者として2009年から日本産うるち米(酒造好適米、飯米)の自社栽培を行っています。

代表商品

フレーザーバレー純米ルネッサンス。自社栽培した原料米で醸した清酒です。

思い出の醸造物 or 好きな醸造物 or 最近はまっている醸造物を教えてください

日本酒の輸入を始めると同時にグレープワインの基礎知識を国際ソムリエ協会のコースで習得し、特に官能評価面での知識と能力向上に努めました。以来ワインのテースティングが趣味になっています。この経験が清酒醸造と清酒の説明や解説をする際の顧客とのインターアクションに役立っています。

その理由やその醸造物にまつわるエピソードなど

2000年に設立した清酒輸入業から5年目、販売が思うようにいかず悩んでいた時期に「カナダ人にとって輸入商品はあくまで他国のお酒。しかしこれが自国で出来たものであれば“愛着と支持”が得られるのではないか」と考えたのが、当地で清酒醸造事業を始めることになったきっかけでした。

さらに「カナダ人に清酒を理解してもらうためには、彼らの言葉(ワインの言語にある表現力)で話せることが必要」だと考え、ワインの勉強に没頭しました。そしてFood&Beverage業界で知り合うワインメーカーやソムリエ、シェフ達にとの交流にも努めてきました。「何故この北の土地で米栽培に執着するのか」とよく聞かれますが、原料の栽培から製品を届けるまでのプロセスがコントロール出来てこそ“ワインと対等になれる”ことを常に意識し、米の栽培や清酒のスタイルの確立に試行錯誤を繰り返してきたと思います。フレーザーバレー純米ルネッサンスはその入口だと考えています。清酒が「世界酒」になるための環境づくりを続けて行きたいと思っています。

思い出の写真

2009年のカナダで最初に出来たコメの収穫風景と現在の様子です。夏季二ヶ月の日中最高気温が40度にもなるバンクーバーから1000㎞離れた地域での試験栽培で北緯49度線でコメが出来ることを確認。現在は70㎞バンクーバー近郊の農場で雑草対策に苦慮しながら増産を目指しています。私にとって“Farm to Table”は永遠の課題です。

ご略歴

1950年生まれ福井県出身。1974年カナダ移住。モントリオール銀行本社勤務を経て日本航空バンクーバー支店航空貨物課長を務めた。1993年BC州政府雇用投資省貿易投資局日本貿易部業務課長。対日輸出と対加投資を担当した。同省退職後2000年に日本酒輸入会社センチュリー・マーケティング・コーポレーションを立ち上げ、吟醸酒の市場を開拓。2007年アーティザン・サケメーカーを興し、清酒醸造家として今日に至る。2013年BC州日本酒協会の設立をはじめカナダにおける日本酒の普及に広く貢献している。BC州立サイモンフレーザー大学MBA課程終了。

趣味

今は仕事以外に没頭できるものはありません。酒造り、米作り、どれも面倒で奥が知れない自然が相手の世界です。だからこそ没頭できるのかも知れません。生涯やり通せるものがあることの喜びは常に忘れないように心がけています。吉田松陰の言葉に「不安と生きるか。理想に死ぬか。」というのがあります。今の私のすごく気になっているフレーズですが、答えが易しいようで難しい、不思議な問いかけです。

ご紹介者・松崎様からのメッセージ

白木さんがバンクーバーに酒蔵を開いた翌年に訪問させていただきました。
コンパクトな設備で海外各地に続々と開業する“クラフト・サケ・ブリュワリー”の先駆けであり、クラフト・スタイルの新しい基準の中で酒造りを世界に広めた、偉大なるパイオニアだと思っています。

現地での酒米作りにも取り組まれているほか、カナダの人たちの嗜好や食文化に寄り添いながら酒質の開発を進めておられることなど、日本産、海外産を問わず示唆に富む活動に感服し、また今後の展開も大いに期待しております。

松崎様へメッセージを!

多くの日本酒関係者とのコンタクトをお持ちの松崎さんから、今回私にバトンを託されたリスク(笑)を顧みられることなく、信頼とご指名をいただいたことに感謝しております。

松崎さんとのお付き合いの中で感銘し非常に勉強になっているのは、とかく視野が狭くなりがちな日本酒業界にあって、とても広い物の見方がお出来になるという点です。Sake World Cupを提唱、運営され、我々クラフト酒メーカーの世界に日本酒の将来の答えを見出そうとされている、このことがその証明であると思っています。これからもお互いの利益、権益を離れた協力関係の中でお付き合いさせていただきたく、よろしくお願いいたします。

告知したいこと(商品やイベントのPRなど)

現在日本国内で当社アーティザンサケメーカーのウェブサイトを立ち上げることを検討しております。現在のウェブサイトで日本語のミラーサイトを構築するのは技術的にも無理があり、日本でその作業を手伝っていただける方を求めています。ご希望の方は[email protected]までお知らせください。また、ワーキングホリデービザまたはワークビザをお持ちの方で当社で酒造りをしたい方、カナダで米作りをしたい方もメールでご連絡ください。

リンク

ホームぺージ:http://www.artisansakemaker.com

今後の抱負や今後へ期待すること

文化や伝統は一つのところに留まることによって停滞し、淀み、やがては朽ちるリスクがあると思います。日本酒も和食も外国に出れば変化していきます。そこに作者のクリエーティビティーが入るからです。また、その国の人たちが持つ味覚や文化的な好みで確実に変化していくのです。日本に入って来たころのイタリアンやフレンチの味は今のそれとは全然違うといっても過言ではないでしょう。それを脅威や悪しきものと考えずに、「歴史のある所で造られるものは常に高く評価され、高い価格で取引される」ことを信じて、むしろ他国で造られる清酒を広く受け入れることを好しとすることが今後の日本酒の海外進出をサポートすることに繋がるのではないかと考えています。世界中でワインが生産されていますが、ボルドーのワインには常に高値がついています。当社のモットーは「Tradition with Innovation」です。Googleの日本語訳では「革新を伴う伝統」と出ます。「伝統を重んじながら時代の要求にあった、或いはその市場にあった造り方をする」。ここに日本酒がいつか「世界酒」になれるヒントがあるのではないでしょうか。

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