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第110巻12号 協会だより

今年も、間もなく冬本番の師走とは言え、比較的暖かい日が続いており、お困りの地域もあるようです。何とか酒造に適した気象条件を望みたいものです。ところで、イネ登熟期の気温がデンプンの性質、ひいては米の溶けやすさを決定することが明らかにされ、その理論に基づく、平成27年産の酒造用原料米の溶解性予測が発表されています。東日本では、7月下旬から8月上旬は平年より高め、8月中旬は平年並み、8月下旬から9月中旬は低め、西日本では7月下旬から8月上旬は平年並みから高めで、8月中旬から9月中旬にかけ平年よりかなり低かったことから、米の溶解性は、7月下旬から8月上旬に出穂する五百万石などの早生品種は、東日本では平年並みからやや溶けが悪い。8月中旬に出穂する 品種は、全国的に平年並みからやや溶け易い。8月下旬から9月上旬に出穂する山田錦などの西日本の晚生品種は、平年より全般的に溶け易い傾向にあり、昨年と比較して、全般に年並みからやや溶け易いと予測されています。産地ごとの傾向については、各酒造組合にお尋ねいただければ最新の情報が入手できると思います。10月中旬以降の行事から、話題を拾ってみました。
 
◆全国酒造技術指導機関合同会議 10月22日に東京、霞ヶ関で開催され、議題として「ワインの表示ルールの制定について」「鑑定企画官当面の課題」「(独法)酒類総合研究所の業務の現状について」に継いで、「各業界団体の取組」から興味深い話題を2,3紹介します。「日本酒造組合中央会」から、平成27年度の新規需要米生産量が前年対比で2倍以上に増加。その大部分は飼料用であるが、酒造用も前年対比約2倍の7千トン。毎年主食用米の生産量が減少している中、酒造業の第6次産業化と関連する興味深い数字でした。「日本洋酒酒造組合」からは、地道なコアー技術の重要性が再確認され、その例として、「ポリフェノール関連技術」、「凍結粉砕化による抽出技術」など、飲料全般への有効利用が紹介されました。「全国地ビール醸造者協議会」からは、発足21年目で、近年注目を集めているが、ビール生産全体の0.6%に過ぎず、大手生産者との価格格差、税率、品質と流通の重要性などの課題、また、地ビール鑑評会の計画の紹介がありました。
 
◆平成27年度 醸造用資材規格協議会セミナーが、11月5日、例年通り、神戸市,
サンセンタープラザで開催され、昨年より10名多い61名の参加をいただきました。プログラムは、「「味わいマップ」の開発と清酒への応用」と題して大関酒造(株) 菅野洋一郎氏が、清酒の味わいを味覚センサーと関連付けて視覚化と体系化を紹介。今後の発展が望まれる講演でした。次いで「酵素剤について」を天野エンザイム(株) 清水康史氏が、醸造用酵素の基本と注意事項、新製品等を中心のご講演でしたが、意外に多くの質問がありました。海外戦略に関連するテーマとして、「醸し人九平治」と題して、(株)萬乗醸造 久野九平治氏がフランスにおける清酒販売戦略から、今後の日本酒の進むべき方向について、ワインの世界戦略を参考に熱弁をいただきました。清酒の輸出にネックとなる貯蔵変化について「貯蔵しても劣化しにくい清酒の製造法」について(独法)酒類総合研究所 西堀菜穂子氏から最新の情報の紹介がありました。最後は、「食品表示法の概要等」と題して大阪国税局 岩槻安浩氏の時宜を得たご講演をいただきました。
 
◆海外ジャーナリストプレスツアー見学会 日本酒造組合中央会が主催の海外メディア見学会の一環として11月9日、そのご一行8名が日本醸造協会に来られました。醸造協会会長のレクチャー後、当会の酵母製造設備を中心に、中央会の通訳の方々に助けられながら、ご案内しました。写真は、終了後の赤煉瓦酒造工場前のスナップです。