協会だより

第109巻5号 協会だより

飛鳥山の”ソメイヨシノ”は終わりましたが、ヤエザクラ、シダレザクラなどまだ楽しめます。今年の東京は、開花宣言後、低温や風雨のため花見にやや盛り上りを欠きましたが、今は、モクレン、コブシ、ヤマブキ続いてツツジなど色とりどり。
酒造りも一段落し、各県、各局単位の酒類鑑評会の審査結果が聞こえて来ますし、全国新酒鑑評会の審査も始まっています。酒造りには、変化と変動の激しい気象条件で、製造にはご苦労されたことと思います。原料米では、山田錦の不足と品質の地域間差が例年になく大きかったようですが、米質は昨年ほど硬くはなく比較的よく溶けたとの感想が多く聞かれました。
◆3月末に開催しました醸造協会の杜氏セミナーの概要を参考までに、紹介しましょう。出品点数は70点、東北から九州各県まで出品されており、本命の出品ではないものの、本年度の全国的な吟醸酒の傾向が掴めるものと思っています。成分値の傾向として、この3年間、着実に低下傾向にあったカプロン酸エチルの平均値が増加に転じました。一方、グルコース含量は増加の一途を辿って2.5%を超えています。このような傾向が市販の特定名称酒にどのような影響を及ぼすか、注視する必要を感じました。官能評価の全般的な印象は、昨年同様、欠点の少ない、よくそろった酒質で、審査が難しかったとの審査員の総評でした。
全国新酒鑑評会の結果待ちで、まだしばらく落ち着かない思いの方も多いのではないでしょうか。醸造協会も審査結果が”きょうかい酵母”の評価に繋がりますので、しばらくは皆様と同じ気持ちです。
◆開催100回記念の清酒製造技術セミナーが4月21日に開催されました。約200名の参加をいただき、北とぴあの飛鳥ホールもほぼ満席の盛会でした。講演から話題を拾ってみました。「 きょうかい酵母Q&A (公財)日本醸造協会」では、今年度新たに頒布予定の「尿素非生産性 高エステル生成酵母 きょうかい1901号(KArg 1901)」を紹介し、参加者にはこの酵母で試醸した清酒500 mlをお渡ししました。K 1801号と比べ、香りが穏やかで、酸度が0.1~0.2 ml高くなる特徴があります。午後からの「清酒製造技術-現在の課題と対策-」と題して、山形県工業技術センター 石垣浩佳氏、福島県ハイテクプラザ 鈴木賢二氏、新潟県醸造試験場 渡邊健一氏、広島県食品工業技術センター 大土井律之氏、伏見醸友会 秦 洋二氏、灘酒研究会 田中伸哉氏によるパネルディスカッションでは、原料米に関して、地域ごとに特徴のある品種や気象変動に強い品種の開発など、原料米に関する話題が中心になりました。蔵元杜氏座談会では、「トップランナーの視座~銘酒を醸す蔵元杜氏の意識、視点から現在の酒造りを考える~」と題して十四代・高木顕統氏×飛露喜・廣木健司氏× 喜久酔・青島 孝氏×鍋島・飯盛直喜氏をパネラーに、司会進行を唐橋ユミ氏(フリーキャスター)によって行われました。若手のエネルギーを感じましたが、各蔵の成功が一朝一夕でなったものではないことがよく分かりました。特別対談は、長谷川浩一氏((株)はせがわ酒店× 中田英寿氏、司会進行を唐橋ユミ氏。最も印象深かったのは、中田氏がこれまでに国内の清酒蔵を北海道の1蔵を残して訪問を終わっている事、ここで得られた繋がりで世界に日本酒をアピールしたいとの意気込みでした。折しも、2014年サッカーワールドカップ、2015年「食」がテーマのミラノ万博・・・2020年東京オリンピック開催などでのアピールを計画中とのこと。最後に、特別講演「平安と江戸の酒にみる粋という世界」と題して、小泉武夫氏(発酵学者・食文化論者)にご講演いただきましたが、江戸の人々が現代人以上に新鮮な魚介類を食べていたことには驚きました。なぜそんなことができたのでしょうか?