竹鶴酒造(株) 石川達也

12月
26
2011

竹鶴酒造(株)石川達也

ご氏名をお願いします

石川達也

現在のご所属などは?

竹鶴酒造株式会社 ・杜氏

代表銘柄

「竹鶴」

思い出の醸造物 or 好きな醸造物 or 最近はまっている醸造物などを一品教えてください

20数年前の「ひこ孫」(神亀酒造株式会社の純米酒)

その理由やその醸造物にまつわるエピソードをぜひ!

全国の銘酒を飲み漁っていた大学時代に巡り合い、私の人生を変えたお酒です。お酒というものが、ただおいしいだけではなく、人間の身体や精神に影響を及ぼす力まで有することを感じさせられて目から鱗がボロボロ落ち、酒造りを志すきっかけとなりました。

このお写真についてお聞かせ下さい

神亀酒造の蔵人時代に、写真家の橋口譲二さんが撮影してくださった記事です(写真集『職』[メディアファクトリー]に所収)。おやっつぁん(故原昭二杜氏)と一緒に写してもらうこと自体、とても嬉しかったのですが、それだけでなく、橋口さんとの出会いも私にとっては大きな出来事でした。写真を撮るときに「自分を消そうとしている」という橋口さんの言葉には大きな衝撃を受け、のちの私の酒造りの基本姿勢ともなっています。

ご略歴

1964(昭和39)年2月広島県東広島市西条出身

1991(平成 3)年3月早稲田大学第二文学部社会専修卒

※卒業論文題目『日本の酒の変遷に関する考察』

1990(平成 2)酒造年度(大学在学中)より神亀酒造蔵人

1991(平成 3)年4月埼玉県蓮田市の神亀酒造株式会社入社

1994(平成 6)年4月同社退社

同年8月広島県竹原市の竹鶴酒造株式会社入社

1996(平成 8)酒造年度より同社杜氏

※神亀酒造の親方が越後杜氏だったため、越後杜氏に仕込まれた広島杜氏という変わり種

2004(平成16)酒造年度より生酛造りを開始

2009(平成21)酒造年度より木桶仕込みを復活

2010(平成22)年4月より2011(平成23)年3月まで、広島のローカルラジオで週一回、酒に関するコーナーを担当。

共著 シリーズ環境社会学 ⑤『食・農・からだの社会学』[新曜社]

現在、広島杜氏組合副組合長

ご趣味

読書。酒に関する書物(雑誌から古本まで)もずいぶん買い込みましたが、狭い自宅には入りきらないので、蔵に置かせてもらっています(農業や飲食関係の本なども)。

ご紹介者・上芝雄史様からのメッセージ

多くの杜氏さんとお会いしましたが、日本酒本来の造りを主張され、実践されてゆくその熱意は、他に類をみたことがありません。ものの成り立ち、因果関係、プロセスの解明など、諸々の現象をよく観察されている方だなと思っています。頑張って下さい。

上芝様へメッセージを!

上芝さんとお付き合いさせていただくようになり、本来職人は、自分一人だけで仕事をするものではなく、道具を作る職人さんなどの存在があって初めて自分の仕事も全うできるのだということを教わり、職人同士のつながり(職人リンク)を意識できるようになりました。そんな職人としての意識、見識の高さに加え、それを人に伝える能力も兼ね備えた上芝さんは、桶文化にとどまらず、醸造の世界にとってもかけがえのない存在だと思います。これからも、いろんなことを学ばせてください。

告知などがございましたらお願いします

略歴の欄にも書いているラジオのコーナーの全放送分がポッドキャスト化され、インターネットで聴けるようになっています。RCC(中国放送)ラジオ【道盛浩のバリシャキNOW】の番組ホームページhttp://www.1350.jp/barisha/

の左側にある酒ゴジラの、間違いだらけの酒常識というバナーをクリックすると、後期の放送分のリストが出てきます。それ以前の放送分は、一番下の[Archives]をクリックすれば、過去の放送月ごとに整理されて出てきます。

一般のリスナー向けの内容ですが、よろしかったらお聴きください。

最後に今後の抱負や期待することを教えて下さい!

現代の酒造りにおいては、「わかる」ことに価値が置かれ、そういう価値観から、「再現性」が重視されるようになっています。逆に、「A→B」といった因果関係が明確でない「わからなさ」を評価されることはまずありません。しかし、生酛や木桶仕込みなど、不確定要素の多い製法に取り組んでみると、そんな現代風の酒造りが何かを見落としているように思えてならないのです。

日本酒不振の現在、よりわかりやすい香味が求められていると言われます。そうでしょうか?人間は、わからないものに惹かれるものではないでしょうか。オーラ、カリスマ、色気など、人間にとって魅力的なのは、どうしたら出るのか謎だし、それについての説明はしづらく、数値化もできない、「わからない」ものです。それは、「わからないけど」惹かれるのではなく、「わからないからこそ」ロマンティックであり、そこに魅力を感じるのだろうと私は考えています。人でもモノでも、「わかってしまう」と興味は失せるものでしょう。

現代のお酒は、昔よりはるかにおいしくなったと言われています。しかし、それでも日本酒離れが止まらない要因の一つとして、わかりやすく(単純に)なりすぎていることもあるのではないでしょうか。

今後は、因果関係のはっきりしない「わからなさ」(複雑さ)も評価できるような、ロマンあふれるお酒の世界になっていくことを期待しています。

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