山形県工業技術センター 小関敏彦

12月
03
2012

山形県工業技術センター小関敏彦

ご氏名をお願いします

小関 敏彦

現在のご所属などは?

山形県工業技術センター 生活技術部長(兼)酒類研究科長

思い出の醸造物 or 好きな醸造物 or 最近はまっている醸造物などを一品教えてください

思い出の醸造物

学生時代に飲んだ「越乃寒梅」

国税庁醸造試験場の研修時代に飲んだChâteau Margaux、Hennessy EXTRA

最近はまっている醸造物

「スパークリング・ワイ」

その理由やその醸造物にまつわるエピソードをぜひ!

私が所属していた大学の研究室OB達は、新潟県内外の酒蔵やワインメーカー等に多くの方々が就職しておりました。たまに教室に顔を出されるときは、担当教授が大の酒好きだったこともあり、よくお酒を持参してくださいました。地方の国立大学ですからほとんどの学生が苦学生(?)で、仲間で飲む酒のレベルというのはご想像通りのものでした。

先輩たちを交えて行われる研究室での酒飲みは、それは楽しいもので、酒も肴も数ランクアップしたものをいただいておりました。学生ですから名前が先行して記憶しているのかもしれませんが、その時に飲んだ越乃寒梅が美味しいという印象が今でも強く残っております。

その後、民間会社に入社し、ワインを担当していた時に国税庁醸造試験場の研修に派遣され、その時に飲んだシャトーマルゴーとヘネシーエクストラの味わいにも非常に驚かされました。ワインの味わいの深さ、ブランデーの最高峰の馥郁たる香り、あまりのインパクトで忘れることができません。

その後、工業技術センターで最初にかかわった事業が「生酒」の開発で、次が高酸味濁り酒でした。それ以来、日本酒の低アルコール化は必然だという考えになり、それ以後2回の低アルコール清酒の開発を行いました。低アルコール化を進めると清酒本来の味わいが薄くなるという欠点を克服するために様々な工夫を凝らしたつもりですが、息の長い商品は、まだ、未完成の段階です。

4年前にデビューした「スパークリング・ワイ」(県内9社で製造販売している)は、日本食の隠し味の技法も取り入れ、これまでで最も完成度が高いと勝手に思っている、おそらく私が現役最後にかかわる低アルコール発泡清酒でしょう。

いつ飲んでも美味しくて・・・・・売れてくれるといいな!! と陰ながら祈っています。

ご略歴

昭和31年3月9日生まれ

昭和53年3月 新潟大学農学部農芸化学科卒

          約2年間の民間会社勤務

昭和55年4月 山形県工業技術センター勤務(酒類関係部門)

              現在にいたる

ご趣味

ゴルフ・卓球・テニス(最近ご無沙汰)

読む本は主に経済や環境関係の書籍が多い(愛読家ではありませんが)

ご紹介者・高垣様からのメッセージ

山形県を「吟醸王国」に育て上げたその手腕は大変尊敬しています。

また、全国新酒鑑評会だけに留まらず、その技術力を如何にして市販酒吟醸につなげてゆくのか、小関さんの思いを一人でも多くの人に知って頂きたいと感じています。

高垣様へメッセージを!

高垣さんとは数年前のある会で知り合いました。それから、3月に開催する山形県新酒鑑評会(全国から180社程の参加があります。)の一般公開の際には、毎年のように山形にお越し頂き、県内の酒蔵見学、県内技術者との交流等もして頂いております。また、お互いにその年の米の状況等の技術情報を交換したりして、大変に参考にさせて頂いています。

我々地方の技術者からみると、かつては、高垣さんの会社の先輩達を含め、灘・伏見の大手蔵の技術者の方々からは、吟醸酒を含めた高級酒の製造方法を数多くご教授頂いたのですが、近年は熱が冷めたのかな(?)とも感じておりました。しかしながら、高垣さんのようなかたも居られたことは大変に嬉しく思ったところです。(その後、他の大手メーカーさんにもいらっしゃることも知りました。・・・失礼致しました。)

日本酒の将来のために、今後ともお互いに頑張りましょう!

告知などがございましたらお願いします

スパークリング・ワイのチラシです。(スタート時の8社分です。)

最後に今後の抱負や期待することを教えて下さい!

世界的に高い評価を受けている日本の工業製品も、世界の使用者目線から見るとオーバークオリティ、過飾、使いづらい、高価格など、日本製品のガラパゴス化などと言われているものも有るようです。そのような中、自動車産業は国際化にいち早く取り組み、一時期のエンジンのパワーだけ(グロス)、室内の過飾、見た目のデザイン等から卒業してトータルバランス重視路線に変換して、現在の成功があるように思います。

我が日本酒業界を振り返ると、まだまだ、日本酒のガラパゴス化が懸念される現状があるように危惧しています。アジアモンスーン気候にマッチした稲作から生まれた日本酒の文化的な価値の表現力、経済的に豊かになり多くの国から多品種のアルコール飲料が低価格で輸入されている現状、嗜好品における品質の多様性確保の必然性、原材料・製造技術向上や新技術開発への取り組みの弱さなど、現在国内で議論・検討・実施されている(されていない?)評価基準や研究内容そして近未来的な目標設定などは、まだまだ脆弱なような気がします。

国内における日本酒の信用度をより高めていくために、日本酒を国際的に展開するために、もう一度、経営者、技術者、県、地域、国内全体のそれぞれのレベルでアプローチを再考しなければならないのではないかと思う時があります。

日本酒の美味しさ・楽しさをもっと表現して、日本の、世界の愛好者の方々により一層楽しんで貰えるように頑張って参りましょう!

タイトルとURLをコピーしました