醸造業界で活躍する方々の「自分のお気に入りの醸造物・それにまつわる思い出」「醸造にかける想い・抱負」等を綴っていただく『いい醸!』。発表いただいた方の紹介により次回のご担当者が決まるため、意外な繋がりも見えるカモ!
 あなたが発表する日も遠くありません。その際はぜひ思いの丈をぶつけてください。

 更新は毎週月曜日・お昼の12時です!


4月 23 2012

合名会社渡辺酒造店
渡辺吉樹

 

ご氏名をお願いします

渡辺 吉樹

 

現在のご所属などは?

合名会社渡辺酒造店 代表社員

 

代表銘柄

「nechi」 「根知男山」

 

思い出の醸造物 or 好きな醸造物 or 最近はまっている醸造物などを
一品教えてください

アルガブランカ イセハラ2011

 

その理由やその醸造物にまつわるエピソードをぜひ!

酒造好適米の自社栽培を始めてから10年目の作付けが始まります。酒蔵の周囲に広がる田んぼで米作りをし、その米で酒造りをする、そんなことをしていると、ワインの世界が身近なものに感じます。

日本酒の世界にもテロワールが語られる時代が必ず来ると思います。ワインの世界では常識的な「産地」「品種」「生産年」「品質」について日本酒でも共通した価値の体系がつくられれば、その幅と奥行きは爆発的に広がります。そんな夢と希望を語る時、日本の固有品種「甲州種」で勝沼のテロワールを表現しているワインは、呑むたびに心をゆさぶられます。

 

ご略歴

1987年 渡辺酒造店入社

2001年 代表社員に就任

2003年 自社栽培を始める

 

ご趣味

愛犬と根知谷をのんびり散歩すること

 

ご紹介者・山同様からのメッセージ

酒米栽培に本格的に取り組んでいると聞いて、一人で根知谷を訪ねたのは、2年前の夏でした。深い森に囲まれた谷の美しさと、渡る風の爽快さは、忘れられません。

そのとき渡邉さんは「谷の人口は減る一方で、農家の後継者は不足どころか、消滅の危機に瀕している」と語り、酒米の栽培に取り組み始めたのは、素晴らしい産地を絶やしたくないという思いからだと話してくれました。「米を栽培することは田んぼを守ること。田んぼを守ることは、美しい里山の景観を守ること。それは日本人の義務であるという想いに、突き動かされているのです」と。

去年訪れたときには、田んぼごとに別のタンクで仕込むことで、米栽培のテロワール(土壌や気候など環境)を究める実験をしていると話してくれました。フランスの自然派ワインの巨匠もここに来て、満足して帰ったそうです。

日本酒は世界に誇る醸造酒。技術革新も目ざましいものがあります。ただ、原料である米について語れる蔵元はまだまだ少ないと思います。ワインにおいては原料やその栽培方法について語るのは常識。「酵母も大事ですが、その前に米ありき」。そう語る渡邉さんに、私は賛同します。ワインの真似をしようというのではありません。日本酒も世界標準で語ろうと言いたいのです。造り手が米を語るようになれば、我々ジャーナリストも、仕込み水や醸造方法、蔵の環境、造り手の人物像以外の情報を発信することができます。そうなれば、ますます日本酒は世界で理解されるようになるでしょう。世界で評価されることで、もっと多くの日本人が日本酒の価値に気がつくのではないでしょうか。私は日本人にもっと日本酒を誇りに思ってほしいのです。

渡邉さんには、これからも世界に向けて発信すると同時に、ぜひ同業の皆さんにも米について語っていただきたいと思います。

 

山同様へメッセージを!

私は日本酒の醸造に携わる者ですが、同時に農業者でもあります。農家の生まれ育ちである私が、酒造技能者として訓練され、酒蔵の代表となったのは、運命のいたずらでしょうか。

山同さんは田んぼを見て回り、稲にさわって、「日本酒の本質的な価値」に深い理解を示してくれました。日本酒を「技術の酒」として語るのではなく、もっと大きな価値を持っているのだと伝えてくれるジャーナリストが私の目の前に現れた瞬間でした。

 

最後に今後の抱負や期待することを教えて下さい!

原料米の自社栽培100%達成と、田んぼの個性を詳細・的確に把握して根知谷における最高レベルの酒米を作り、根知谷の自然環境を映し出すような酒造りを実現することです。

 

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