お酒造りで、酵母の最も大切な仕事はアルコール(エチルアルコール)をつくることです。前回までのPart1,2に引き続き、今回から2〜3回にわたって、清酒酵母のアルコール発酵のお話をします。前回までに、清酒酵母は鶏の卵を1/5,000〜1/10,000に縮めたような姿の微生物だというお話をしました。このような清酒酵母がわずか 1cc(ml)のもろみの中に1〜2億個もちいて、一生懸命アルコールをつくり続けてくれます。
 清酒酵母に限らず、酵母の多くはぶどう糖からアルコールをつくる性質をもっていますが、酵母がつくるアルコールの原料になるのは、お米のデンプン、直接はお米のデンプンが麹の働きで変化した糖、ぶどう糖(グルコースともいいます)です。
 
 ぶどう糖からアルコールへの道=解糖系=

 酵母の細胞の中でぶどう糖は複雑な化学変化を受けてアルコールに変わりますが、驚かないでください、その途中までの道筋は私たちの筋肉などでも全く同じです。私たちのみならず、ほとんどの生物が持つ共通の道筋です。
 ぶどう糖は、図―1 の道に沿って、10の反応によってピルビン酸へ変化しますが、ここまでの道筋はほとんどの生物にとって共通のものです。ピルビン酸から先は図―2を見てください。筋肉や一部の乳酸菌と酵母とでは大きく道筋が変わります。私たちが激しい運動をした後、筋肉に痛みを感じる原因の一つは、酸素の供給不足により筋肉に乳酸が蓄積するためとされています。
 ここでもう一つ話を複雑にしますが、実は、 図―2の道筋は酸素がかなり不足したときの道です。酸素が充分にあるときには、酵母や筋肉では、ピルビン酸は第3の道を通って炭酸ガスと水とに完全に酸化分解されます。乳酸菌の場合は、これともまた話は異なりますが、ここでは省略します。では、酸素が充分ならお酒(アルコール)ができないのでは??  そのお話は次回にまわします。
 酵母では、ピルビン酸から炭酸が放出され、アセトアルデヒドになり、更に還元されてエチルアルコールができます。ぶどう糖からアルコールへの道を化学式で表すと、

                                      C6H12O6→2C2H5OH+2CO2

となり、理論的にぶどう糖100gからおおよそ51gのアルコールが生成し、49gの炭酸ガスが発生します。炭酸ガスはほとんどが揮散してしまいますが、ビールやシャンパンではこれを封じ込めて発泡性をもたせるわけです。清酒でも最近では発泡性をもたせた、いわゆるガス入り清酒などもあります。
 お酒のもろみでは、白米1トンからおおよそ250〜330kg、容積にすると315〜420リットルのアルコールを得ています。アルコール分15度の純米酒ですと、1升びんでおおよそ1150〜1550本ということになります。今回はここまで。



「Part 1 清酒酵母ってどんな生き物?」はこちらから

「Part 2 清酒酵母ってどんな生き物?」はこちらから

「Part 4 清酒酵母のアルコール発酵(その2)」はこちらから

「Part 5 清酒酵母の系譜調べ」はこちらから

「Part 6 「酵母」という名前の由来」はこちらから

「Part 7 泡なし酵母物語」はこちらから

「Part 8
酵母の変り種−赤い清酒酵母−」はこちらから

「Part 9 酵母はつらいよ!−ストレスとその克服−」はこちらから

「Part10殺し屋酵母」はこちらから


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