清酒酵母ってどんな生き物なのでしょうか。前回のPart 1に引き続き、今回は清酒酵母がどのようにして子孫を増やすのか、清酒酵母の増殖についてお話しをすることにします。

2−1.酵母は芽をだして子孫を増やす
 清酒酵母は図−1や2(前回Part1に載せた写真です)図−3A、Bのように、細胞が芽を出し、その芽が大きくなるとちぎれて2個の細胞になる、という方法で数(子孫)を増やします。芽を出す細胞を「母細胞」、芽の方、子供の細胞を「娘細胞」といいます。なぜか「息子細胞」とはいいません。芽が出てお互いに細胞がちぎれた跡は、オヘソになって残ります。それぞれを「出芽痕」(母細胞の方のオヘソ)、「出生痕」(娘細胞の方のオヘソ)といいます。出芽痕を数えれば、母細胞が何回子を産んだ(出芽した)かを知ることができます。
 清酒酵母は最適の条件下では、おおよそ2時間に1回の速さで、出芽し、娘細胞がちぎれ、1個が2個、4個、8個になるという増殖を繰り返すことができます。 とすると、
1、2、4、8、16、 32 … 行き着く先は ∞ でしょうか? どっこいそうはいきません。
A
B
図-3 酵母の出芽・増殖の様子   (写真:東京農大 東 和男 先生)
A:娘細胞が成長していき、母細胞から細胞核が移行しつつあります。やがて、細胞核も2つに分裂します。
B:娘さいぼうも立派に成長しました。今まさに、独り立ちの時が迫っています。

理由ははっきりしませんが、どんな場合でも最大数億ケ/mlまでで止まり、それ以上は決して増えません。清酒もろみでは、前にもお話したように、1グラム当たり1〜2億ケの清酒酵母で発酵が続けられます。

 2−2.酵母にはオスとメスがあり、交配も?!
 栄養状態の極端に悪い状態にさらされると、酵母は細胞内に4個の胞子を造って、環境がよくなるまで休眠してしまいます。この4個の胞子はそれぞれ2個ずつオスとメスのように、接合型の違うa型とα型に分けられます。それぞれの胞子を分離して、栄養の良い環境に置くと、a型とα型の胞子が接合して新しい酵母(二倍体)に生まれ変わります。この様子を示したのが図−4で、これを酵母の生活環とよんでいますが、この現象を利用して優良清酒酵母を育種するために交配させます。「きょうかい13号」は、きょうかい9号と10号とを交配させて育種した菌株で両者のそれぞれよい性質を受け継いだ株です。
図−4 酵母の生活環

 また、清酒酵母もそうですが、酵母の中にはa型とα型の胞子を別々にし、接合させずに培養してもそれぞれが酵母に生育します(一倍体)が、いろんな面で弱く、実用的な酒造りには向きません。
 それから、分子遺伝学的な手法を用いる育種も各方面で研究されていますが,食品としての安全性を保証するためのガイドラインが現在のところ確立されておらず,遺伝子組換えにより造成された清酒酵母はいっさい実用化されていません。

【数学ファンのために】  最初1,000個あった酵母が、いま2時間に1回の速さで出芽して2個になる増殖をすべての酵母細胞がいっせいに繰り返しています。酵母の数が2億個になるのはおおよそ何時間後でしょうか?
(答えは次回をお楽しみに)



 次回は、清酒酵母の大きな仕事、アルコールを造るお話しをしましょう。お楽しみに。それから、数学ファンのための答えも。
「Part 1 清酒酵母ってどんな生き物?」はこちらから

「Part 3 清酒酵母のアルコール発酵(その1)」はこちらから

「Part 4 清酒酵母のアルコール発酵(その2)」はこちらから


「Part 5 清酒酵母の系譜調べ」はこちらから

「Part 6 「酵母」という名前の由来」はこちらから

「Part 7 泡なし酵母物語」はこちらから

「Part 8 酵母の変り種−赤い清酒酵母−」はこちらから


「Part 9 酵母はつらいよ!−ストレスとその克服−」はこちらから

「Part10殺し屋酵母」はこちらから


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