お酒は、アルコール(化学的にもう少し正確に言えば、エチルアルコール)が含まれているから「お酒」なのです。そしてお酒を飲めば酔います。私たちがお酒を飲んで酔う原因もアルコールです。清酒もろみの中で一生懸命に働いて、このアルコールを造ってくれるのが「清酒酵母」なんです。では、いったい清酒酵母ってどんな生き物なのでしょうか。これから数回に分けて清酒酵母の正体を皆さんの前に明らかにしていきましょう。
 第1回目の今回は、清酒酵母の姿と大きさ−身体測定−と酵母細胞の内部を覗いてみることにします。
 
 1−1.清酒酵母の姿と大きさ−身体測定:身長と体重−
 清酒酵母は、図−1のように、鶏の卵を縦横ともにギュッとおおよそ1/10,000に縮めたような姿をしています。そう、大きいもので身長?!(長径)が10ミクロン、小さいものは5ミクロン位です。ちなみに、1ミクロンというのは1ミリメートルの1/1,000の長さです。では、体重は? 太ったのや痩せたものもいるのですが、いかに科学が進んだとはいえ、酵母を1個ずつ体重計に乗せて計るわけにはいきません。皆にいっせいに体重計に乗ってもらい 平均を出すしか方法はありません。 前に述べた身長は顕微鏡で見ながら測る「ものさし」 マイクロメーターがあるのですが…。200〜300億個の酵母が一緒に体重計に乗るとおおよそ1グラムになりますから、そう、酵母1個の体重はおおよそ33〜50ピコグラムということになります。
  「ピコ」という単位は、「ミリ」が1/1,000、そのまた1/1,000…と小さくなっていくと、順次「ミクロ」「ナノ」「ピコ」という単位になりますので、ピコグラムは1/1012グラムになります。 このような微生物が清酒もろみ1グラムの中に1〜2億個いてアルコールを造り続けてくれるわけですから、まさに小さい巨人、そのパワーには脱帽です。
 
  1−2.小さな巨人「清酒酵母」細胞の内部を覗く

  鶏の卵のような形をした清酒酵母の内部は、図−2のようになっています。これは卵をスパッと輪切りにして覗いたと思ってください。酵母の内部には、生物として生活し、子孫を増やし、残すために必要な器官を持っています。もちろんアルコールもこの細胞の中で造られ、外へ吐き出されます。酵母は単細胞の微生物であるとはいえ、乳酸菌や納豆菌に比べたら、私たち高等生物と同じような細胞の構造を持っており、「高等微生物」に分類されます。「私たち」といっても人間や動物の細胞に比べたら、卵の殻のように厚い細胞壁に覆われ、「植物」に近いのです。高等生物と同じような細胞の構造を持っているのでバイオの研究では高等生物の細胞モデルとしてよく研究されるわけです。
N:細胞核、V:液胞(物質の貯蔵庫)R:リボソーム(タンパク質の合成工場であり、細胞内の小さな点様のもの)、Mit:ミトコンドリア(エネルギーの生産工場)、ER:小胞体膜(種々の作業場)、CW:細胞壁、CM:細胞膜(種々の物質の出し入れを行う)、BS:出生痕(母細胞から分かれた証:オヘソ)。


 

次回は、清酒酵母がどのようにして子孫を増やすか、ということと酵母にもオスとメスがある?!というお話しをします。それでは、次回をお楽しみに!

「Part 2 清酒酵母ってどんな生き物?」はこちらから

「Part 3 清酒酵母のアルコール発酵(その1)」はこちらから

「Part 4 清酒酵母のアルコール発酵(その2)」はこちらから

「Part 5 清酒酵母の系譜しらべ」はこちらから


「Part 6 「酵母」という名前の由来」はこちらから


「Part 7 泡なし酵母物語」はこちらから

「Part 8 酵母の変り種−赤い清酒酵母−」はこちらから

「Part 9 酵母はつらいよ!−ストレスとその克服−」はこちらから

「Part10殺し屋酵母」はこちらから


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